私の月誌(2001年8月)

新潟県立歴史博物館訪問

 私の故郷は新潟県の巻町です。
 どこにでもある田舎町ですが、最近では巻というと、時に、ああ、あの巻ですか、という反応があり、うれしくもあります。原発の誘致を巡って長年町政が揺れ動き、ついには住民投票が行われ、反対票が多数を占めました。また、町長には誘致反対派が推薦した候補が当選し、誘致をストップさせましたが、今に至るも原発問題は町の世論を2分しています。また、酒好きには、日本酒はもちろん、ワイン、ビールとそれぞれ酒蔵があります。特に地ビールでは国産第1号の越後ビールは、日帰り温泉「じょんのび館」のすぐ前という好立地でおすすめです。
 前置きが長くなりました。というわけで毎年盆暮れには帰省してます。この夏帰省した折、長岡で途中下車し、去年開館した新潟県立歴史博物館を見てきました。長岡駅からやや遠いのが難ですが、予想以上に充実した博物館で、大満足でした。
 ここの博物館は、仕事上でもかかわりがあり、思い入れがありました。資料調査のために新潟から担当の五百川(いおかわ)さん、そして後任の田中さんがたびたび大原においでになりました。新潟は県史編纂、県立文書館建設でも長年のおつきあいがありました。谷口さんは新潟県の地名の読み方がわからなくなると、何度も大原にみえた文書館の担当者に電話で問い合わせをするくらいの親密さです。このあたりは通常の図書館では考えられない職員と利用者とのつながりといえます。実は私も、大学図書館問題研究会の全国大会が1999年夏に新潟・長岡で開催された際、社会科学系の主題分科会で五百川さんを講師にお招きし、「農民運動とその史料」というテーマで講演していただいたものです。その年に本来であれば新潟県立歴史博物館は開館していたはずなのですが、そして開館していれば見学会も同時にセットできたのですが、財政的事情から開館が遅れたため、残念に思っていたものです。
 その五百川さんが大原に見えたときによくおっしゃておられたことは、農民運動や小作争議というとどうしても暗いイメージがつきまとい、県の上層部はなかなか理解してくれず、スペースも思うにまかせません、でも新潟では欠かせないのです、と、このことです。たしかに私がいくつか見た公の博物館では、近現代の展示スペースはほとんどつけたりという感じで、せいぜいが太平洋戦争関係の展示がされているところが多いようです。考古、博物もいいけれど、今生活している人たちに身近な近現代の出来事がもっと展示されていい、と思っていました。訪問した博物館は思った以上に農民運動、小作争議、そして当時の人々の暮らしがとても丁寧に展示・解説されていました。もちろん他の展示も充実しており、雪とくらしのコーナーなど圧巻でした。博物館のまわりは、野原がひろがっていましたが、近いうちに市民が集う憩いの場として整備されるようです。人々の暮らしに視点をおいたこの博物館、おすすめです。
 新潟県立歴史博物館のホームページはこちらです。


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