私の月誌(2001年9月)


東京国立近代美術館フィルムセンターの展示会

 この8月から11月にかけて京橋にある東京国立近代美術館フィルムセンターで「1930年代の印刷デザイン−−大衆文化における伝達」が開かれています。
 この展示会ではプロレタリア文化運動が花開いた1930年代のポスター、雑誌デザインなど約80点が展示されていますが、そのうち大原所蔵のポスターが約50点と、展示資料の過半を占めています。さながら大原の資料展示会の趣きです。これまでもさまざまな資料展示会に所蔵資料を出品協力することはあったのですが、これほど大量の資料を出品するのは私が大原に来て以来はじめてのことです。
 もともとはインターネットで公開している戦後ポスターを担当の学芸員が見たことから企画されたものです。インターネットは私たちが想像する以上にいろんなところで見られているものだと、あらためて実感しました。これまで出版物や展示で利用されるポスターは比較的限定されていました。それがホームページで全点公開したことにより、これまで日の目をみなかったポスターがあらたな脚光をあびることにもなりました。担当の学芸員の方も、今回はこれまで一度も使われなかったものを展示したい、と意欲を示されていました。
 この展示会では直接担当した横内さんが、これまでのキャリアを活かし、学内での広報を精力的にしてくれました。私が展示会に行ったのは平日の昼間ですが、入場者はぱらぱらといったところでした。他の日に行った人も同様入場者は少なかったとのことでした。いわゆる名画などの人気イベントではないこと、もともとが映画フィルムの保存・活用がメインの施設であること、しかも建物の最上階に展示ホールがあり、場所がややわかりにくいことなども影響していると思われます。担当された学芸員の方によると入場者は少ないが、図録の売れ行きはすこぶるいいとのことです。ぶらっと立ち寄るというのではなく、目的意識的に観にきていること、見た人にはインパクトを与えているせいではないか、ともおっしゃていました。ただ私にとっては展示の構成はややわかりにくかったです。労働運動、文化運動といった内容主題ではなく、デザインの観点からコーナーがつくられていたせいかもしれません。
 戦前ポスターに関してはインターネットでの効果的な公開とともに、本として出版するプロジェクトが研究員の間ですすめられています。今年の大原の叢書として『ポスターの社会史』としてひつじ書房から発行するものです。これには、ホームページで公開している「OISR.ORG20世紀ポスター展」をまるごと収めたCD-ROMを付録として付ける予定です。この展示会会期中に刊行できたら、販売コーナーにおいていただく予定です。

「1930代の印刷デザイン展」ポスター 『ポスターの社会史』


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