私の月誌(2002年9月)

ネットで時間の節約を

 「図書館学の五法則」というのがあります。インドの図書館学者、ランガナタン(1892−1972)が提唱したものです。その第4法則は「読者の時間を節約せよ」です。きわめて明解で、至言といえます。図書館員はその目標に向かって、目録の考案、コンピュータの導入、また、カウンターでの応接技術の習得などなどさまざまなことにチャレンジしてきました。そして今日、インターネットが、時間とともに距離をもまきこんでその環境を飛躍的に加速しています。
 某日、福岡から、在野で部落問題を研究している方が来所されました。新幹線を使って11時頃おいでになり、閉館の17時ちょっと過ぎまでいらっしゃいました。インターネットで研究所の原資料を検索し、利用請求し、閲覧し、複写する。ご本人が当初考えていたより見るべき資料があったようで、最後のコピーの時はけっこう大慌てでした。図書類は本人のセルフコピーとし(10円)、資料類を私がやり(30円)、ざっと5百枚ほどになりました。まだまだしたりなさそうでしたが、今日の宿代と閉館時間を心配しながら「今日はここまで」と心を残しながら帰られました。
 大原は立地も考慮し、来館しないでもできるサービスにも力を入れており、論文名、文献が特定できればコピーの郵送もしていますし、機関対象には図書の郵送貸出しもしています。
 でも資料類は図書、雑誌と違って、やはり現物にあたらないと用を得ません。研究所ではここ数年ネット環境の整備に力を入れており、所蔵資料類の検索カードや、資料そのものの電子化を鋭意進めています。その結果ごく一部(雑誌、新聞のタイトル検索)を除き、インターネットでこれまでカード目録で検索していたことが、ほぼそのままインターネットで検索できる環境に至りました。研究所に来所すればカード目録も利用できますが、それをそのままインターネットに載せたことにより多様な検索が可能となっています。九州にいても、研究所に来ても同じ画面で検索することになるわけです。そんなわけで外部からの問い合わせがあると、まずは「インターネットが利用できますか。でしたら、あらかじめ検索していただいて、できれば事前に利用する資料をメールやFAXでご連絡いただければ用意しておきます」といった応対をしています。
 今回福岡からみえた方にはそのことが伝わっていなくて、滞在時間の1/3ほどはパソコンに向かっていました。もし事前に調べてきていれば、滞在時間の大半を実際に資料にあたる時間に活用できたわけです。
 ネットは「読者の時間を節約する」強力な武器であると実感したしだいです。



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