私の月誌(2010年8月)

『資本論』がテレビ出演

 昨日(8月24日)夕方から深夜にかけ渋谷のNHKにいました。といっても私がテレビに出るわけではもちろんなく、マルクスのサインのある『資本論』を番組に提供するためです。つまり、私の仕事はお宝本のお守ということですね。
 番組は、教育テレビの「一週間で『資本論』」。来月の24日(月)から4夜連続の放送予定だそうです
。  番組コンセプトによると、「誰もが知りたい偉大な「人類の思想」(学問・学説・古典)を一週間でわかりやすく、納得感をもって視聴者に提示する、(中略)、初回のテーマは『資本論』。言わずとしれたマルクスが書いた超難解本。実はこの本、格差社会・派遣切り・貧困など資本主義の矛盾があらわになった昨今、大ブレーク中! 漫画も含め、専門書としては異例の売り上げを示している。なぜ今、『資本論』なのか?・・(後略)」。
 なるほど、なるほど、、。今の時代状況が『資本論』を求めているということか。かくしてそのルーツの初版本、しかもマルクス自身の署名のある大原のお宝本にお声がかかったということなのですね。先週、8月12日にはスタッフの方々が研究所に見えて終日その『資本論』や最近の翻訳本、書庫などを撮影していかれました。そして昨日スタジオでスタッフ、出演者総出による収録というわけです。
 これがなんと豪華なのです。メインコメンテーターは的場昭弘さん(神奈川大学)。自らマルクスオタクと言っておられるように最近マルクスの化身のように旺盛に関連本を出しています。司会は軽妙な語り口が持ち味の堀尾正明さん。そして各回の対論者として森永卓郎さん(第1回)、湯浅誠さん(2回)、浜矩子さん(3回)、田中直毅さん(4回)。いずれも今をときめく超売れっ子。これらの方々の日程を調整するだけでもさぞ担当の方のご苦労があったこと、想像に難くありません。さすがNHKの底力というべきか。
 昨日は1回目と2回目放送分の収録でした。大原の『資本論』が登場するのは1回目のはじめころです。的場さんと堀尾さんが本を開きながら紹介します。収録は数10分かけてましたが、放送はおそらくほんの数10秒か。  的場さんの解説はさすがにポイントをおさえ、明快でした。しかしいかんせん元々が超難解本。後半の森永さんのオタク体験をもとにした「資本論」論がとてもおもしろく、理解をひろげます。この対論という方法、役者を得たこともありますが、いいですね。2回目以降も楽しみです。私も、ご他聞にもれず、ハルカムカシ前の職場に就職したてのころ、先輩にダマされて労働学校で超難解本に挑戦するも途中で挫折、というクチですが、今になってもう一度トライしてみようかと思わされるような刺激を受けました。
 かくして、『資本論』と付録の私が解放されたのは、『資本論』のお役目が終わった一回目収録終了後。湯浅さんはその少し前にスタジオに入ってきて、私のすぐ前で収録のようすを見ていました。うしろからですが、近くで拝見したのは初めて。想像どおり、とてもりりしいお姿の方でした。森永さんと好対照、シツレイ! できれば2回目の収録も見たかったのですが、なにせその時点ですでに夜の11時をちょっとまわったところ。予定時間をかなりおしてました。堀尾さんが収録の合間に「30分もない番組にこんなに長時間働かせるのが資本家」とかジョークを言ってスタッフの笑いをとっていたのはさすがしゃべりのプロ。
 NHKを出て、渋谷駅まではいただいたタクシー券、半蔵門線の電車はまだありましたが、市ヶ尾からの終バスはとっくに出たあと。タクシーでようやく家にたどりついたのが12時半過ぎ。いまごろはまだ的場さんと湯浅さん対論やってるのかな〜、とか、スタッフの方々はどうやって帰るんだろ〜な、とかヨケイナことを考えてしまいました。


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