赤旗事件の赤旗 1908年

 大きさは42×72cm。どちらが表か裏か不明ですが、赤ネルの生地にそれぞれに「社会主義」「SOCIALISM」とテープが貼り付けてあります。時日を経たからか「社会主義」の「社」が欠落しています。この旗は正確には「伝・赤旗事件の赤旗」とすべきかもしれません。どうしてかというと、この旗が赤旗事件で実際使われた旗かどうかが確定できないからです。
 赤旗事件とはどういう事件だったのでしょう。大原社研編による『社会労働運動大年表』でみてみます。

  山口義三の出獄記念歓迎会が神田錦輝館で硬軟両派70余人を集めて開かれた際、閉会まぎわに大杉栄、荒畑寒村、宇都宮卓爾、村木源次郎などの直接行動派が<軟派>への示威として<無政府共産>と記した赤旗をかかげて場外にくり出し、警官隊と衝突した。当局はこれを大事件にしたてあげ、大杉、荒畑のほか堺利彦、山川均ら14人が検挙され、1〜2年の懲役となった。これは従来にない重刑で、直接行動派は壊滅した。しかし、彼等は獄中にあったため大逆事件からのがれた。この事件を山形有朋・桂太郎系官僚は、社会主義に若干宥和的だった西園寺内閣打倒に利用し、7月第2次桂内閣を成立させた。

 この旗は組合機関誌などと共に高瀬清氏より研究所で購入しています。
 旗の隅に「堺」の縫いとりがあります。堺とは堺利彦であることは間違いありません。この旗の元々の所蔵者は堺で、なんらかの経緯があって高瀬の手に渡ったと推定されます。獄中にいた堺は大逆事件に大きな衝撃を受けたのでしょう。出獄後事件の被告たちを訪ねる旅をします。また、幸徳らの蔵書を譲り受け「大逆文庫」と命名し保管します。堺旧蔵図書資料の一部は、死後、荒畑寒村を仲介して向坂逸郎のもとに保管され、現在は、向坂文庫の中のコレクションとして大原社研の書庫に保管されていますが、「大逆文庫印」のある図書資料も少ないですがあります。和書よりも洋書が多く、ほかに「平民新聞」など初期社会主義運動の新聞にも押されています。
(2010.4記)

資料が語る近現代史(目次)に戻る