1 戦前・戦中の図書館
(1)国の図書館政策
(2)図書館界と図書館員は (3)特徴
@図書館は国民を教化する機関だった、戦争が深まるにつけその傾向を強めた
A図書館員は国策に迎合することで発展を図ろうとした
2 図書館法の誕生
(1)図書館の戦争被害と活動再開
全国図書館数(1940→1947年)公立3451→1386館(40.2%)私立1324→164館 (12.4%)総数4776→1551館(32.5%)(『日本長期統計総覧』より)
東京都立図書館 全焼:日比谷等12館,計44万冊焼失 開館不能:深川等13館
計10万冊消失 開館継続:京橋等3館 蔵書73万冊→29万冊(39.8%)
(2)連合国最高司令官総司令部(略称GHQ)の図書館政策
1945.10 @婦人解放,A労働組合結成の奨励,B学校教育の民主化,C秘密警察の撤廃、 D経済機構の民主化を首相に要求.図書館に対し,閲覧禁止処置撤廃=,教化宣伝用刊行物(『神ながらの道』『英霊讃歌』等)の複本没収
1946.3 第一次米国教育使節団報告
公開利用,公費運営,無料,法的基礎、図書館組織(中央図書館と分館網−学 校内分館を含む)、児童サービス重視−−近代公立図書館の実現
(3)図書館法制定をめぐる状況
@制定運動の担い手 中田邦造・都立日比谷図書館長、岡田温・帝国図書長、・キー二ー 等ClE担当官+文部省
A図書館関係者の構想−戦前の図書館の理想像
・図書館義務設置・専任職員配置、待遇向上・中央図書館制度・文部省内に図書館局設置.全国公共図書館を指導監督・国庫補助の保障・図書館員養成機関の整備
BClE担当官の主張
・中央図書館制度 no. 県立図書館による市町村立図書館の直接指導は教育委員会の自主性を侵害する⇒日図協が行うべきもの.
・有料制no. 図書館利用は国民の権利.
C文部省の1949.1法案
・政令市を除く市町村立図書館は「閲覧料を徴収することができる」
・町村立図書館の義務設置(10,500館 7,300万冊 3万6千人 計36億円が必要)
DGHQ 日本の民主化⇒アジアの反共の防壁,極東の工場に.経済安定九原則(’48.12) ドッジ・ライン(緊縮財政,’49)
GHQ経済科学局,町村立図書館の義務設置認めず.
E文部次官通牒「公民館の設置運営について」1946.7
F社会教育法成立 1949.5
「第9条 図書館及ぴ博物館は,社会教育のための機関とする.
2 図書館及び博物館に関し必要な事項は,別に法律をもって定める.」
(4)図書館法の成立(1950.4.30施行)とその評価
@図書館法の法的位置
A図書館法の内容
・国民の教育権保障の法体系明示
・公立図書館は地方自治体が条例を定めて設置する
・無料原則
B図書館法の評価
(5)まとめ
@戦後の図書館界の指導者たちは戦前からの国の指導に期待することから抜けきれなかった
A民主的な図書館法を生み出せた背景は一部の図書館関係者と文部官僚、CIE担当者
3 模索期 1950−1963
(1)図書館(施設と蔵書)の貧しさ
(2)高知市民図書館の先駆性と限界
(3)サービス展開の模索
@PTA母親文庫運動
A松本市立図書館の読書会運動
B母と子の20分間読書運動
Cしかし,全国的には停滞
(4)まとめ
@民主的な図書館法はできたが、それを実現する条件はととのっておらず、戦前からの指導者意識も払底できていなかった
A様々な試みがなされ、自主的な研究会も各分野で生まれた。
B総じて次の飛躍のために準備期ととらえることができる
4 近代公立図書館の発見
(1)『中小都市における公共図育館の運営』(1963、JLA刊)
<報告の思想>
@公共図書館は,国民の基本的人権である知的目由を保障する機関.
A資料提供という機能は,公共図書館にとって本質的,基本的,核心的なものであり,その他の図書館機能のいずれにも優先する
B中小公共図書館こそ公共図書館の全てである
C大図書館は,中小図書館の後楯として必要である
<運営の基準> 図書館のサービス適正対象:5万人
@資料と利用者の管理重視から利用重視へ
A新鮮な資料を→資料費確保
<サービス>
館外奉仕:分館,貸出文庫,BM/館内奉仕:レファレンス,個人貸出,団体貸出,視聴覚資料/集会・行事/児童・青少年サービス/郷土資料/新聞雑誌/図書館協力−−網羅的に叙述.何からどう始めるか?
(2)前川恒雄の貸出しの発見
(3)日野市立図書館の実践
1965.6 BM1台から出発.資料費:1966年度880万円,67年度1,050万円
1966年度 貸出し:20万冊(人口7万5千人 登録者1万人 貸出密度2.7冊 登録率13.3%)
(4)中小図書館の管理・運営マニュアル『市民の図書館』(原案執筆:前川、JLA、1970) ・市民の求める図書を自由に気軽に貸出すこと
・児童の読書要求に応え,徹底して児童にサービスすること
・図書館を市民の身近かにおくために.全域にサービス網をはりめぐらすこと一「いま市立図書館のやらなけれぱならないこと」
(5)まとめ
@60年代は戦前からの図民教化、館内閲覧中心、整理中心」の図書館活動に別れをつげる出発点となった
A国民の知る権利、個人の自由な資料要求に応える図書館理念が生まれ、その具体的な方法として「貸し出し」を発見した
5 展開 1970〜
(1)全国の数的状況
(2)東京都の図書館振興政策 1970「図書館政策の課題と対策」
(3)自治体の好調な財政状況
(4)地域文庫・親子文庫連動と図書館づくり運動
(5)貸出しをのばす活動
様々な制限の撤廃 予約制度など
(6)まとめ
@資料提供を核とした図書館活動がときに古い体質とせめぎあいながら全国的に展開された
A貸し出しをのばす取り組みが、出版流通の問題や、図書館の自由などあらたな課題を生み出している
6 そして80年代〜
80−90年代は外では地方行革との関わり、内では日常化した住民サービスの継承・展開が課題となっている
(1)「貸し出しを増やさないための具体的方策」−−神戸
(2)管理運営の委託−−京都、足立、調布
(3)規制緩和で図書館法「改悪」
7 21世紀にむけて−−利用者・住民との協力・協同−−原点はカウンター