社会民主党の創立発起人 「写真」 1901年

 ここに写る社会民主党は、今の社会民主党ではありません。わが国で最初の社会主義政党として、明治34(1901)年5月18日に結成され、わずか3日で政府により禁止された政党です。結成の翌日19日に、前年公布された治安警察法に基づき届けたものの、20日にやはり治安警察法により禁止されたのです。
 写る6名は安部磯雄、片山潜、河上清、木下尚江、幸徳秋水、西川光次郎。
 松尾尊たか氏によると、日清戦争後に急速に発達した日本資本主義は同時にさまざまな社会問題を生み、社会問題研究会、社会主義協会、労働組合期成会、普通選挙期成同盟会などの運動が展開され、その最先端に位置する人たちによって結成され、そして、わずか3日の命でしたが、逆にかえってそのことが世間の注目を引くことなり、社会主義協会の活動がいっそう盛んになり、やがて日露戦争後の平民社、さらに大正デモクラシーへと引き継がれていくこととなる、歴史上の画期であったということです。
 そういわれてあらためて写真をよく見ると、とても誇らしげに、またある意味確信犯的にそれぞれがポーズを決めているように見えてきます。
 向坂文庫の中の堺利彦旧蔵資料として保存されてきたこの写真は、近現代史の研究書や教科書などの刊行物、展示会等で利用される頻度では研究所所蔵資料中ベスト5に入ります。
 「宣言」の中で掲げた理想綱領と実際綱領をみると、社会主義というよりはむしろ民主主義的な内容が多く盛られています。宣言にいう「社会主義と民主主義により貧富の懸隔を打破し、全世界に平和主義の勝利を得せしめん」という旗印は今日もなお輝いているといます。3日で終えた社会民主党をたんに歴史のひとこまとにとどめることなく、写真に写る6人が見つめたその先を受けとめていくことが求められているといえましょう。(2007年9月記)

<参考文献>
『社会主義の誕生--社会民主党100年』(論創社、2001)
『日本最初の社会主義政党社会民主党100年』(同志社大学人文科学研究所、2001)


史料が語る近現代史(目次)に戻る